「価値」と「意味」の違い。なぜ起業家は必死なのか理解できない人向けの話

最近、筆者は様々な人と新規事業開発等の話をよくする機会があるのですが、よく話題になるのが「事業を作れる人とは一体どういう人材なのか」と言う話題です。そしていつも落ち着く結論があります。
事業を作れる人や、社会に対して何らかの形でインパクトが与えられる人は、すべて価値よりも意味を重視しているのではないか、と言う話です。

「価値」と「意味」とは何か

ここで言葉の定義をしておきます。ここでいう価値とは、他者から有益だと認められているものです。
金銭的な価値が与えられているものもありますが、恋人があなたのことを重要に思ってくれている、というような、金銭的な価値には代えられないものも含まれます。
とにかく社会的に必要だと認められているのが価値あるもの、です。

その一方で意味とはあなたが考える思い込みです。
何らかの物事に対してあなたはどのように考えるのか、を表したものです。
あなたが何かしらの思い入れのあるペンダントを持っているとします。普通の人にとってはただのペンダントでも、あなたにとっては思い出の詰まったペンダントです。つまり、あなたはそのペンダントに何らかの意味を見出しています。それはあなたが一方的に思っている、いわば思い込みでもあり、他の人にとっては共有できないものかもしれません。しかしそれでもあなた自身がそれに対して何らかの思いを抱いているのであれば、それには意味がある、と言うことになります。

まとめると、価値は他人から勝手に与えられるものですが、
意味はあなたが独自でも見出せるものになります。

そして事業を作れない人は、意味付けがどうしても下手な人が多いのではないか?と言う話題になったのです。意味付けがきちんとできる人でないと事業も作れないし、普通のサラリーマン止まりだよね、と言う話になったのです。

価値は他人が勝手に作ってしまう

日本の大企業のサラリーマンが新規事業に手を出してたいてい失敗するのは、この「意味」が作れないからなのです。その一方で価値を共有することにかけては、なかなかに長けています。

例えばあなたが犯罪者の更生に何らかの意味を見出したとしましょう。それはあなたのいわば思い込みであり、社会的に合意されていないので、価値では無いものだとします。あなたがもし起業家タイプなのであれば、この思い込みを他の人に伝え、共有し、お金を払ってくれる価値を作るために、様々な仕組みを考えます。この意味付けをきちんと明文化したものがいわば創業者の経営倫理であり、社是になるわけです。
その証拠に経営理念や社是には、その会社の世の中に対する考え方が書かれています。
社会貢献をすることだったり、顧客に幸せを届けるといった抽象的な言葉はそれが原因です。

日本の大企業に勤めているとこの部分ができなくなってしまうのです。その一方で価値を継承したり、発展させるのは極めて得意になります。価値とは既に社会的に認められているものなので、それをどのように最大化させるか、もしくは維持させるか、といったことがうまいのです。
例えば取引先に迷惑をかけない、と言う考え方は価値に入ります。取引先が既にあなたの会社を尊重しているので、これは社会的な価値だからです。
(こういう世界を作りたいから、この取引先を選ぶ、と言う考え方は意味になります。)

価値を絶対に潰さないと言うのは日本企業では極めて重視される考え方です。
多くの企業の倒産会見等では、取引先や、地域社会の皆様にご迷惑をかけして申し訳ない、と言う言い方をします。まさにこれは「取引先や地域社会に認められている価値を提供できなくなって、すみません」と言う意味に他なりません。そのため日本の大企業のサラリーマンは必死に取引先を守ろうとしますし、地域の雇用に気を使ったりするわけです。

この考え方はそれ自体とても素敵なのですが、1つの欠点として、すでに価値が与えられていないとアクションが取れない、と言うものがあります。つまり自分の思い込みであり、価値が社会的に存在していない仕事や物事には何もできないのです。
そしてこれこそが、筆者が様々な新規事業開発が大企業で失敗する根本の原因だと思っています。

なぜ、日本企業では価値が重視されるのか?

実はアメリカやヨーロッパの企業では、自分の思っていることが尊重される文化があるので、意味と価値は明確に区別されていると筆者は考えています。その一方で日本の文化では自分の意見よりも社会的な合意が重視される傾向が多いため、価値と意味はしばしば混同されがちです。

もともと日本が、文化的に田んぼを共同で耕す社会性を重視する文化だった事が、日本人が社会性を重視する理由だと、様々な哲学者からよく指摘されています。
そして、これを現代で助長しているシステムこそが新卒一括採用制度だと筆者は考えています。

新卒一括採用制度そのものは、日本企業の良い側面として捉えられることが多いはずです。しかし新卒一括採用制度の重大な欠点として、どうしても受け身になりがちな人を育ててしまう点があります。社会人になってすぐの段階で、新社会人は上司につき従って仕事のお作法を学ぶことにかなりの時間を費やすことになっています。その段階で仕事とは「上司からの指示やKPIを忠実に守ること」であり、「それさえ守っていればそこそこ良いお給料がもらえる」と言う意識を持たせてしまうのです。

本来であれば仕事とは「他人から価値のあるものだと認めてもらって、お金を頂く」事に他なりません。その観点がすっぽり抜け落ちてしまい、「上司からの指示」「KPI目標」といった形式化された仕事でないと自分が受け付けない、といった極めて非生産的な意識が植え付けられてしまうのです。
よく日本の優良企業の社員が語る「うちの社員はいい人ばっかりだから」とは、ある意味において社会的に合意が取れた価値を重んじる、と言う意味です。自分はこれを信じる、会社を辞めてでもこの道で行く、と言う意識はそこからは生まれません。そして後者こそ起業家精神、アントレプレナーシップと呼ばれるものです。

日本の大企業の新規事業が失敗する最大の原因が、ひたすら価値を重視してきて、その結果昇進を重ねてきた人々に新規事業を任せるからなのです。実際の新規事業とは、大企業のように既に存在する価値が重んじられる社会では、全く通用しないような手段がしばしばとられています。
自分の理想の世界を実現する為であれば、法律のグレーゾーンもお構いなし。地球の裏に行ってでも、這ってでもやってやる、と言う意識が必要なのですが、このような考え方は価値重視の人たちには全く通用しません。「へーすごい。なんか必死でやってるなあ。自分には無理だけど」という、他人事の感想が出てくるのが関の山なのです。

まとめ、意味を重視できる人が新規事業をやろう

いかがだったでしょうか。価値と意味の違いの話から、なぜ日本企業の新規事業が失敗しがちなのかをお話ししてきました。

ここには様々な考え方がありますが、自分はこう思う、と言う意見がある方はぜひとも管理人までお問い合わせください。コメント等お待ちしています。