副業労働時間の本業との通算見直し、ってなに?わかりやすく解説します

2019年6月5日、日本経済新聞にて政府の規制改革会議が副業労働時間の通算を見直しが妥当との提言をまとめた、という発表がされました。(報道はこちら

規制改革会議?労働時間の通算?
なんだそれ、という方も多いのではないでしょうか。
この記事ではなるべくわかりやすく解説します!

そもそも労働時間の通算制度とは?

日本では労働基準法により労働者の労働時間は週で40時間との規定があります。これにより基本的には1日8時間、それ以上働いた場合は時間外労働として雇用側は割増賃金を払う必要があります。

もっとわかりやすく言うと、あなたが平日に朝9時から18時まで働き、1時間昼間に休憩したとします。この場合1日8時間労働になります。ではこの労働時間の後、つまり19時から22時まで副業として毎日アルバイトをした場合は、賃金はどうなるのでしょうか?

答えは、このアルバイトは時間外労働としてみなされます。つまりアルバイトは最初から残業として計算されるため、副業バイトの賃金に× 1.25倍をしなければなりません。
毎日1時間だけバイトしていても、その賃金は1.25倍になるということです。労働する側からすると、なんだかとってもありがたいですね。

では、本業と副業はどのように区別されるのでしょうか?
基本的には最初に雇用契約を結んだ事業が本業、それよりも後に雇用契約を結んだ事業が副業とされています。1日のうちどの時間帯で仕事をしているのかは勘案されません。仮に上記の例でアルバイトを朝5時から8時までした後に本業に出勤しても、アルバイト側が割増賃金を払わなければならないのは変わりません。

ちなみにこれは基本的に雇用に限定されます。例えば上記でアルバイトの代わりにアフィリエイトで毎日三時間ほど作業をし、お金を稼いでいたとしても、アフィリエイトで割増賃金を請求することはできません。また業務委託契約なども同様です。

労働時間の通算と割増賃金、現状の問題点は?

この通算制度、労働者にとってはありがたい限りですが、実際にはいくつかの問題点があります。

まず副業側の企業が割増賃金を支払う必要があることです。これは副業として雇用している事業側からすると、その従業員は最初から割高な賃金で雇用しなければなりません。企業からすれば、なるべく人件費は抑えたいところ。ですので、副業としてわざわざ割高な労働者を雇う理由がありません。結果として副業の促進の足かせになっている、というのが政府の規制改革会議の見方です。

またこの割増賃金は支払われていない場合がほとんどのようです。
というのも、そもそもこの割増賃金制度は、副業側と本業側で労働時間を合算する必要があるからです(労働時間の管理は本業側の義務であるとされています)。しかし本業側が副業を認めていない場合は、労働者側からするとそもそも副業を申請し辛いでしょう。結果として副業と本業で労働時間が合算されないケースも多々あると見られています。
さらに副業と本業に関わらず事業者側からすると、労働時間の合算に伴う割増賃金の計算など、様々な労務管理が大きな負担になる事は容易に予想できます。実際に政府の調査では、副業を解禁していない企業がその理由として2番目に多い意見が「副業解禁に伴って必要になる労務管理の増大」です。

そのため現状では、この割増賃金制度はあまり効果的に機能しておらず、副業促進の妨げとなっている、というのが規制改革会議の検討結果だったのです。

今後は割増賃金と労働時間の管理が分離される予定

政府は働き方改革を大きな課題として認識しているため、副業しやすい環境の促進を今後も進めていくものと思われます。そのため副業促進の足かせになっている割増賃金制度を労働時間の管理と分離する方向で規制改革案が進んでいます。

具体的には、労働時間の通算による割増賃金はなくなる可能性があります。政府の規制改革会議の資料によれば、労働時間の通算はあくまで主たる事業者の努力義務程度にとどめることが妥当、とされています(出典)。
つまり、労働者の健康管理を損なわない程度に労働時間を把握する努力に留めておきましょう、
割増賃金制度は別物として適用しないでおきましょう、という形になるものと推測されます。

ちなみに労働時間が通算されず、副業側から割増賃金が支払われないのは、ヨーロッパでは一般的なようです。しかしヨーロッパでは様々な労働者保護規制が整備され、施行されていることに留意しなければならないでしょう。例えばドイツでは、1人の労働者の労働時間を一括で管理し、1日8時間を超過した場合は休暇で補償する銀行口座のような制度「Arbeitszeitkonto」が普及しています(参考)。日本でも労働時間の一元管理が行えるような制度の普及が望まれます。

さらに懸念点としてはもう一つ、副業の名の元に本業の残業代を支払わない悪用ができてしまうことです。
具体的には、本業を8時間労働とし、その残業時間を別の会社への勤務としてつけるとどうなるでしょうか?通算による割増賃金がなくなるので、別会社への副業を装うことで時間外労働による割増賃金をなくすことが可能になります。
実際に法制化する際には、経営権や資本関係がある程度深い企業への副業や、本業の業務とのある程度の関連性・連続性が認められる場合には現行の割増賃金が適応されるといった、何らかの条件を付与することが必須になるのではないでしょうか。

「労働時間の通算見直し」のまとめ

労働時間の通算とは、労働基準法に基づき複数の事業者での一人の労働者の労働時間を合算することです。そして副業側の事業からすると、本業で労働時間を超えている場合に、その労働者には割増賃金を強制的に支払わなければならないため、副業として労働者を雇用し辛いという問題点がありました。

政府はこの問題の解決のため、労働時間の通算と割増賃金制度を分離しようとしています。
これはあくまで規制改革会議の案の1つであるため、今後どのような形で議論が進むのか分かりませんが、注目の規制改革の1つと言えるでしょう。